2018年7月18日夕方、上島珈琲店にて、「上島珈琲店特別試飲会 コーヒーで笑顔になる日 supported by antenna*」を開催。今回のイベントは、上島珈琲店などのカフェの運営やフランチャイズ事業を行っているUCCフードサービスシステムズ株式会社（以下UFS）と、「antenna* 」の共同開催です。
UCCといえば、「カップから農園まで」の言葉通り、直営農園でのコーヒー豆生産、コーヒー飲料販売、上島珈琲店運営など、コーヒーに関連するあらゆる事業を展開していることで知られています。
今回のイベントでは、上島珈琲店で普段提供されている6種類のコーヒーと、飲み比べや試飲用に、店頭では絶対にお目にかかれない2種類のコーヒーを提供しました。
今回の参加者は、応募者の中からランダムに選ばれた7名の男女です。隣同士から徐々に会話が始まり、アイスコーヒー片手に全体がほどよく打ち解けてきたところでイベントを開始しました。
まずはUFSの小辻さんより、上島珈琲店の大きな特徴であるネルドリップについて説明をいただきました。
上島珈琲店は、全てのコーヒーをネルドリップ式で抽出しています。よくあるのは紙を使ったペーパードリップ式ですが、ネルドリップ式は紙の代わりにネルを使います。
これがネルです。「ネルシャツ」と同じ「フランネル」という織物でできています。外側は少しザラつきがありますが、中はなめらかで繊維が細かいです。この細かな繊維によって、滑らかな口当たりのコーヒーが抽出できるそうです。
参加者はもちろんコーヒー好きばかりですが、自宅でコーヒーを飲むとしてもペーパードリップがせいぜいで、ネルドリップ式でコーヒーの抽出をしたことがある人はいませんでした。
それもそのはずです。ネルドリップは取り扱いが大変難しく、技術も必要な抽出方法です。上島珈琲店では、ネルドリップ式の手の動きを再現した機械を使うことで、クオリティーを一定に保つことに成功しています。また、使用するネルの形にもこだわっており、特許を取っているそうです。
こういったこだわりによって、上島珈琲店のまろやかで香り豊かなコーヒーが生み出されています。
まず配られたのは、最もスタンダードな「ネルドリップブレンドコーヒー」です。ネルドリップのこだわりを意識しながら飲んでみると、確かにまろやかで香り豊かな気がします。ストーリーを聞きながら味わうことで大きな価値を感じることができます。
続いて参加者に配布したのは、かなり分厚いトーストです。
こちらはモーニングでのみ販売されている「厚切りバタートースト」を半分にカットしたものです。ネルドリップブレンドコーヒーとの相性を考え、オリジナルのレシピで作られています。強力粉と薄力粉をブレンドすることでさっくりと仕上げたやや甘めのトーストは、深い味わいのコーヒーとぴったりです。朝はこれだけで満足できるビジネスマンも多いのではないでしょうか。
ネルドリップコーヒーに合うお菓子として、ブルゴーニュ産発酵バターを使った「塩マドレーヌ」と、京都の老舗宇治茶専門店「丸宗」のほうじ茶を使ったフィナンシェも配り、これらもお供として楽しんでいただき、試飲を続けます。
続いては、「無糖ミルク珈琲」です。
今回のイベントは、普段あまり頼まないメニューの美味しさを知ってほしいという狙いもあり、1杯目のネルドリップブレンドコーヒー以外は変わり種ばかりです。
これらにも上島珈琲店のこだわりがたっぷり詰まっています。
上島珈琲店のミルク珈琲は全て「ダブルネルドリップ方式」で抽出されたコーヒーを使っています。ダブルネルドリップ方式とはネルドリップで抽出したコーヒーを、新たなコーヒー粉でさらに濾過抽出する方式で二度濾過することによって、雑味や酸味が吸収され、よりクリアな味わいのコーヒーが抽出できるそうです。
なんと今回は、通常では絶対にお目にかかることのできない、ダブルネルドリップ方式で抽出したコーヒーの原液まで試飲することができました。
参加者からは「まるでエスプレッソだ！」という声が飛び交っていました。「通常このままで飲むものではないので、残していいですよ」と小辻さんは話されましたが、それでも「これはこれで美味しいね」と飲みきった参加者も多くいました。
しかし、上島珈琲店のミルク珈琲のこだわりはこれだけでは終わりません。ダブルネル抽出液を、コーヒー2：ミルク8の割合でブレンドすることもこだわりの一つだそうです。小辻さんはこれを「黄金比」だと言います。
一般的なカフェオレはコーヒー1：ミルク1の割合でブレンドするため、上島珈琲店のカフェオレはかなりミルクが多いと言えますが、これによってミルクのまろやかさが十分に感じることができます。また、コーヒーはダブルネル方式で抽出しているため、量が少なくてもミルクに負けることなく、程よい主張が感じられます。まさに黄金比と言えます。
試しに、ダブルネル抽出液とミルクを1：1で合わせた特別なカフェオレも参加者たちは体験しました。これは通常は絶対に販売されることのない、イベントならではの試飲メニューです。
さらっとして飲みやすいと感じた方も中にはいましたが、やはり「2：8の黄金比が美味しい」という声が多かったです。一方で「もっとミルクが多くてもいけるよ」なんて声も挙がり、参加者同士で感想を述べあい盛り上がっていました。
続いては「黒糖ミルク珈琲」です。
ここからは、ミルク珈琲のアレンジメニューが続きます。
黒糖ミルク珈琲は飲んだ瞬間に口の中いっぱいに黒糖の風味が広がります。黄金比はそのままに、沖縄県産のサトウキビを煮詰めた黒糖蜜を加えています。店頭でも、「甘みが癖になる」という意見が多かったです。
「ブルボンヴァニラの無糖ミルク珈琲」には、レユニオン島（インド洋に浮かぶフランスの海外県）の「モンレニオンヴァニラ」を使っています。モンレニオンヴァニラは、世界のバニラ総生産量のうち1％程度しか採れないことから、バニラの女王と呼ばれています。
また、かつてレユニオン島では、ルイ王朝が愛した幻のコーヒー「ブルボンポワントゥ」が栽培されており、UCCはそれを復活させて毎年数量限定で販売しているそうです。
肝心のブルボンヴァニラの無糖ミルク珈琲ですが、口に含んだ瞬間にバニラの香りがブワッと広がります。無糖にも関わらず、甘みが感じることができます。
「名前を言うのにためらうから、普通だったらなかなか頼めないね」との意見で盛り上がりましたが、「とっても美味しいから次回から頼んでみよう」「無糖なのにバニラの香りで甘さが感じられるから、ダイエット中にいいかも」などと女性からの評価が大変高かったです。普段頼まないメニューの美味しさを伝えたいというイベントの狙いの一つがしっかりと達成されました。
牛乳の代わりに豆乳を使った「豆乳ミルク珈琲」は、国産大豆の無調整豆乳を使っています。まろやかで自然な味わいが、とても飲みやすいです。
最後はこの夏のイチ押し商品「コーヒーモヒート」です（現在は販売終了）。炭酸とオリジナルノンアルコールモヒートシロップにダブルネル抽出液をミックスしたものです。
オリジナルシロップには、コーヒー豆では有名な「ブルーマウンテン」の産地で作られている「ジャマイカンラム」を使用しています。夏の暑さにぴったりの爽やかなドリンクでした。
「もっとコーヒー感が強くてもいいかも」とダブルネル抽出液の量を自身で調節して楽しんでいる参加者もおり、小辻さんもリアルな意見に耳を傾けていました。
8種類のコーヒーから、上島珈琲店のこだわりがいくつも垣間見られる大変充実したイベントとなりました。
お気に入りを聞いてみたところ、女性はコーヒーモヒートや豆乳ミルク珈琲と答える参加者が多かったです。
今回最も人気が高かったのは豆乳ミルク珈琲でした。ある女性参加者は普段から豆乳ミルク珈琲が一番好きで、「これからも変わらず豆乳ミルク珈琲派です」と話していました。
参加者の中には上島珈琲店のヘビーユーザーが意外と少なく、初めて来店したという人もいましたが、今回のイベントをきっかけに「また来たい」と思った参加者も多かったようです。
参加者も最後まで飲み比べやコーヒー談義を楽しんでおり、「ネルは使い捨て？」「コーヒーの味の決め手は品種？ 産地？ 焙煎度合い？ 淹れ方？」など、さまざまな質問が飛び出していました。
参加者同士の会話も大変盛り上がり、イベントのタイトル通り、「コーヒーで笑顔になる」1日を過ごせたのではないでしょうか。
小辻優子さん（UFS）
これまで、コーヒーに関するイベントをしてこなかったわけではありませんが、実際に店頭で提供している商品を味わってもらうイベントは開催したことがありませんでした。
そこで、antenna*の北見さんにご提案いただき、普段は飲まないような幅広いメニューを試飲するイベントを開催することになりました。
上島珈琲店を利用したことがない方に魅力を知ってもらったり、普段来ている方にも未開拓のメニューを知ってもらったりすることができたと思います。
また、思っていた以上に参加者から意見がたくさん出てきて大変参考になりました。少人数でやりとりできるのは楽しいですね。これからの商品やイベント開催に活かしていきたいと思います。
北見裕介（antenna*）
今回は、antenna*で展開する「カフェとパンとスイーツと」のスピンオフ企画としてイベントを開催しました。上島珈琲店さんのメニューの豊富さに魅力を感じていたので、それをアピールできるようなイベントにしてはどうかと提案させていただきました。
イベントを終えて、その点はしっかりと伝えられたと感じています。特に、私が代表例にはなるのですが、普段ブラックを頼みがちな人には、そのほかにも魅力的なメニューがあることを知ってもらえたと思います。
また、このSNS時代に少人数イベントを行う価値も重要なポイントです。どんなにネットが発達していても、味わう、触れることはまだできません。では、効率よく直接体験してもらうために大きなイベントをやればいいのかと言うと、それだけでもないと思っています。
いくら大きなイベントを開催しても、SNS上でその話題は数日も持ちません。それなら、手間はかかっても、細かな発信を連続して行うことが大事だと思っています。きちんとおもてなしできる環境をつくり、普段の価値を伝え続ける機会をこれからもつくっていきたいです。
また、東京都内、関東近郊でさまざまなイベントが行われていますが、自社の発信だけでは伝えきれないを価値や魅力を代わりに発信し、antenna*ユーザーに楽しんでもらいたいと考えています。流行の発信場所としてantenna*を機能させたいので、これからもこういったイベントは続けていきたいです。
カフェユーザーの中には、毎回同じメニューしか頼んでいない、他にどのようなメニューがあるのかすら把握していない人も多いです。そんなカフェユーザーにとって、このようなイベントは、未知の領域へのハードルを越える後押しをしてくれる貴重なものとなったのではないでしょうか。参加者からも、今回6種類（店頭販売されている商品）のコーヒーを飲んでみて、普段なら絶対にチャレンジしないが、飲んでみると自分好みだと感じるものが多々あったという感想を聞くことができました。
普段店頭では知ることができないこだわりを聞くことによって、よりコーヒーを楽しむことができたという参加者の声からも、タイトル通り「コーヒーで笑顔になる」イベントになったのではないでしょうか。
